相愛大学ウィンドオーケストラ第32回定期演奏会  →当日の演奏ビデオを見る
 2010年7月14日(水)18時30分開演(開場18時)
 尼崎アルカイックホール
今年も相愛ウィンド定期演奏会を開催いたします。
指揮は若林義人、小林恵子の両氏、独奏者には大阪フィルハーモニー交響楽団テューバ奏者、川浪浩一氏を迎えヴォーン=ウィリアムス「テューバ協奏曲」を演奏いたします。また日本を代表する作曲家大前哲氏の「アクセス66」初演を行います。さらに課題曲III「うちなーのてぃだ」を第3楽章に含むMeltin'Blueを全曲演奏致します。作曲者長野雄行氏により今回の演奏会のために完成されました(作曲者によるビデオメッセージをご覧下さい)。今年の課題曲にとお考えの皆さんお聞きのがしなく。
いずれも相愛ウィンドでしか成し得ない多彩なプログラム、皆様のご来場をお待ちしております。

コンサートについてのお問い合わせ先:相愛大学06-6612-5900(代)、メールは管弦打研究室あてこちら

指揮:小林恵子
小林恵子氏による2010年吹奏楽コンクール課題曲ワンポイントアドバイスをいただきました


指揮:若林義人
ビデオメッセージを見る




チラシを見る
プログラム  *印初演
2010年度全日本吹奏楽コンクール課題曲
 II. オーディナリー・マーチ /高橋宏樹
 V. 吹奏楽のためのスケルツォ 第2番《夏》/鹿野草平
 Meltin' Blue /長野雄行  
  序奏
  第1楽章 めんそーれ
  第2楽章 海と空の交わるところ
  第3楽章 うちなーのてぃだ(課題曲III)

●トッカータ・マルツィアーレ /ヴォーン=ウィリアムス

●交響曲第3番 /アルフレッド・リード


●交響序曲《アクセス66》
ウィンドアンサンブル版op.150b
 /大前 哲

相愛学園創立120周年記念特別委嘱作品
 
交響讃歌《親鸞》ウィンドアンサンブル版op.144 II.讃歌 /大前 哲

●テューバ協奏曲 /R.V.ウィリアムス /テューバ独奏:川浪浩一

●ローマの祭 /O.レスピーギ /仲田 守 編曲

テューバ独奏:
川浪浩一
川浪浩一 (Koichi Kwanami) プロフィール

福岡県出身。2006年相愛大学音楽学部卒業。同大学卒業演 奏会、第76回読売新人演奏会、第47回関西新人演奏会、第22 回ヤマハ管楽器新人演奏会、第31回北九州新人演奏会に出 演。在学中に『第19回相愛オーケストラコンチェルトの夕 べ』のオーディションに合格し、ソリストとして、梅田俊明氏の指揮で、ヴォーン=ウィリアムズのテューバコンチェルトを演奏。
2007 年大阪フィルハーモニー交響楽団にトップ奏者として入団。
2009 年にアフィニス夏の音楽祭に参加、ジーン・ポコーニ氏に師事。同年、大阪クラシックにて、A・プラウのチューバ協奏曲を日本初演。
これまでにテューバを、緒方文則、故唐川集三、吉野竜城の各氏に師事。ハンス・ニッケル、レックス・マーティン、ペリー・ホーヘンダイク、レイモンド・ムネコムの各氏のマスタークラスを受講。相愛大学非常勤講師。
 

作曲者: 大前哲
大前 哲 (Satoshi Ohmae) プロフィール

大阪学芸(現教育)大学卒業後、関西を中心とした作曲活動を行い、数多くの現代音楽演奏会の企画・制作に参画する。以後、ヨーロッパ、アメリカの各都市等、国内外で数多くの作品を発表する他、各種の音楽祭に出品。楽譜出版、CD収録等多数。作品総数約150曲。
大阪文化祭賞、ブルー・メール賞、井植文化賞、「グスタフ・マーラー国際作曲賞」第2位、「ウディネ国際作曲賞」第1位、「国際ビエンナーレ作曲賞」第1位、「タンスマン国際作曲賞」第3位、「ルトスワフスキ国際作曲賞」第2位等を受賞。相愛大学音楽学部教授。



作曲者:長野雄行

長野雄行(Takeyuki Nagano)

指揮:小林恵子

課題曲ワンポイントアドバイスとして佼成ウインドのメールマガジンに掲載した文章です(小林恵子)
 
[I] 迷走するサラバンド

 テナー・バリトンサックスの実音Dから始まり、いろいろな場面を模索するも、結局のところ半音下がって(ピッコロの実音Cis)消えていく・・・と、まさに迷走曲。
 このD音からCis音までの1本の迷走道路を構成するためには、場面ごとのキャラクターも大切ですが、場面転換する部分(練習記号の“前後”、もしくは、楽語が表記されている“前後”)がとてもとても重要。その部分は、合奏の中でrit.やaccel.することばかりに気をとられず、特に丁寧に演奏するように心がけましょう。
 あとは、パート譜に沢山あるクレッシェンドの扱い方。この曲だけに限りませんが、クレッシェンドは後半にググッと音量を上げる方が効果的ですが、どうしてもクレッシェンドを見た途端すぐに大きくしてしまいがちです。そして、この曲には、連続してクレッシェンドが書かれている箇所も多いので、周りにつられてつい大きくなり、全体が常にボリューム大の状態になりがちですので、ぜひ再確認してみて下さい。音量も、ここぞというところまでは抑制されている方が、この曲の迷走する緊張感が保たれると思います。
 指揮者は、この曲のいいプロポーションをつくることが重要です。(他の曲も勿論そうではありますが。)先述の場面転換の部分の構成力は、指揮者にかかってきます。そして、Fからの部分の自然なアゴーギク、Jからアゴーギクで音楽を前に運んで緊張感をつくることも大事ですので、がんばってくださいね!
 

[II] オーディナリー・マーチ

 実は、このマーチについて質問されることが一番多いのですが、その質問のほとんどが、テンポ設定について。二分の二拍子でこのテンポ表記に、まだピタッとはまらない楽団も多いのではないでしょうか。最終的に、自分達がイメージするニュアンスが表現できる、自分達のベストなテンポで演奏することが、最大のポイントになるでしょう。
 世界中に様々な言語があるように、マーチといっても沢山の種類があります。作曲者の高橋さんの「ドイツマーチのイメージ」という言葉を拝借すれば、例えば、マーチのイメージを膨らませるには、タイケ作曲「旧友」を、音色感(第一マーチの調性感)のイメージを膨らませるには、ベートーヴェン作曲「交響曲第三番“英雄”」か「ピアノ協奏曲第五番“皇帝”」の冒頭を、それぞれ聴くだけでも何かヒントになるかもしれません。
 ただ単に重く演奏する、というだけでは音楽が停滞してしまうので、その中で音楽の推進力ももちろん必要です。かといって、音楽を前に進ませることだけに捉われると、音そのものが鳴りません。指揮者は、そのいいバランスを見極めることが、非常に大切な役割になります。
 奏者の皆さんは、最終的にどのテンポで演奏するにせよ、音の軽重さにかかわらず、全部の音に対し、子音をハッキリさせて、母音をちゃんと鳴らすことには変わりありません。一音、一音、特に八分音符や裏拍にあたる音は、この時期にもう一度、個人練習やセクション練習で、ゆっくり丁寧に音作りしてみたらどうでしょうか!
 

III 吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」

 ゆったりと、てぃんさぐぬ花の旋律から流れ、そして[A]から沖縄の明るい音楽がスタートするわけですが、なんといってもポイントは、Allegro Vivaceのテンポ感・リズム感を統一させることです。合奏中、聴けば聴くほど、周りに合わせようとすればするほど、音楽の推進力が無くなり、テンポが停滞してしまった、という経験をされた楽団もあるのではないでしょうか。
 この3/4+2/4拍子ですが、「付点四分音符+付点四分音符+四分音符+四分音符」という変則4拍子でとるとどうでしょう。イメージとしては、スパイ大作戦のテーマ、ウエストサイドストーリーのアメリカ(こちらは変則5拍子にですが)と同じ感覚です。スパイ大作戦のバスのリズムの感覚でこの曲を演奏すると、心地よいテンポが生まれると思います。ただし、くれぐれも滑りすぎには注意してみて下さい。
 変則4拍子だとリズムが混乱してしまうという場合は、もちろん5拍子でいいのですが、3拍目と4拍目の間、もしくは5拍目と次の1拍目の間が延びないように、そして、4・5拍目が重く(遅く)ならないように、注意してみてください。
 テンポ感が決まれば、あとは、その中で、各ソリがいかにカッコよく聴かせられるか。ソリごとに順番にスポットライトが当たっていくかのようなこの曲、ぜひ楽器ごと(セクションごと)に決めちゃって下さい。
 指揮者は、アーティキュレーション(音の処理)が統一されているか、チェックを忘れずに!
 

IV 汐風のマーチ

 まず指揮者側の話になりますが、「4/4だけど、2拍子で振ってもいいのですか?」という質問を何人かの方から伺いました。この速度だと、手(指揮)の都合上も、頭の中の感覚も、4拍子で感じたほうがいいのか、2拍子で感じたほうがいいのか、ちょうど境目にあたる方が多いと思います。なので、振り方も、頭の中の感覚も、固執せずに、自分(指揮者)対楽団で、いちばん音楽が流れるいい加減を見つけてみて下さい。
 この速度でAllegroの心地よい音楽の流れをつくろうとすると、ただ単にアクセルを踏みっぱなしになりがちですが、アクセルを踏んで進んだら(緊張)、フレーズの終わりはニュートラル(弛緩)にしなければなりません。どの曲でもそうですが、この音楽の緊張・弛緩の感覚こそ大切で、その踏みかえるタイミングは、和声と関連されています。大まかで十分なので、ぜひ、和声を取り出してやってみて下さい。意外と、同じハーモニーが長く続く部分が多く、同じハーモニーが続くときは、ひとかたまりで感じると、テンポ自体も 見つかると思いますし、そこに乗っかって旋律を演奏すると軽さも生まれてきます。軽い音楽でない部分には、全てアクセントが書いてあるので、パート譜のアクセント記号は大ヒントになると思います。そして、和声が複雑な部分やころころ変わるところが、この曲の中のクライマックスで、聴かせどころにな ります。
 こうやって活字にすると難しくなってしまいますが、和声を感じることは、奏者にとっても大切な要素の1つ。わかりやすい和声なので、絶対に大丈夫です、ぜひ、爽やかなマーチを奏でて下さい。
 

V 吹奏楽のためのスケルツォ 第2番《夏》

 変拍子だし、カオスの部分は自分の音もよくわからないし・・・と、きっと謎だらけ練習がスタートしたと思いますが、少しやっていくと、あれ、意外とスッキリ?!という印象に変わった方も多いと思います。
 変拍子の部分は、拍にとらわれ過ぎると、なかなか身体にもリズムが入ってきませんが、フレーズだけに着目して演奏すると、変拍子ということを忘れてしまうくらいの感覚になります。クレッシェンド・デクレッシェンドとアクセントをヒントにフレーズがみえると思うので、とにかく横に音楽をとらえてみて下さい。それぞれのフレーズの重心がみえると、本当にスッキリ、演奏しやすいと思います。
 その中でイレギュラーなモティーフ、冒頭からの中低音や、[3]の前や[16]のアクセントの連打などが、タイミングよく演奏されると、いいスパイスになり、面白い音楽につながると思います。
 指揮者も奏者同様、フレーズを指揮することが大切です。流れを大切に、全部の拍を同じ強さで叩かないように注意して下さい。リズムパターンで特に気をつけなければならないのは、ここでは最初の小節を3+2として表記するとして、3が連続する部分(例・[8]の前)、3の連続と3に挟まれる2(例・[2]の3小節目)でしょうか。
 最後に、あえて書く話でもないですが、何団体か演奏を聴かせていただく機会があり、いろいろな風鈴にも出会えたのですが、テューバのソロのお膳立てをするステキな風鈴の音色、奏でる前に音が鳴らないように、くれぐれも注意を払って下さいね!


指揮:若林義人

若林義人 (Yoshito Wakabayashi) プロフィール

 東京都出身。京都市立芸術大学卒業。在学中に京都市交響楽団に入団、卒業と同時に安部賞を受賞。また入団当初より龍谷大学吹奏楽部の指導に当たる。トランペットを故金石幸夫、有馬純昭、田宮堅二の各氏に師事。京都市交響楽団トランペット奏者として25年6ヶ月在籍し、2007年の3月をもって退団。2007年度より龍谷大学吹奏楽部音楽監督常任指揮者、相愛大学ウィンドオーケストラ指揮者に就任。他に生駒市立生駒中学校吹奏楽部など、数多くのバンド指導を手がける。近年は、ジャズ・ブラス・コレクション、ブラスパラダイス大阪、ブラススカラーズ大阪等に客演指揮者として招かれ、指揮者としての活動も精力的に行っている。またウインズスコア社で、龍谷大学吹奏楽部、相愛大学ウィンドオーケストラ、東海大学付属高輪台高校吹奏楽部、福岡工業大学付属城東高校吹奏楽部、柏市立酒井根中学校吹奏楽部とのポップスレコーディングの監修・指導も行っている。現在、龍谷大学学友学術文化局吹奏楽部音楽監督常任指揮者、相愛大学非常勤講師、京都市立芸術大学非常勤講師、21世紀の吹奏楽“響宴”会員。