*作曲者、和田信さんは実は以前教え子でした。音楽大学の吹奏楽授業で、そして個人的に指揮とスコアリーディングをレッスンしていました。現在航空自衛隊中央音楽隊で活躍しています。空の広がり、雲の美しさを描いたこの美しい行進曲のスコアを見て、その人柄を感じます。
*タイトルにある Silver Lining は航空自衛隊隊員ならではの視点ですね。雲の裏側の光は一般には見ることがなかなかできません。この言葉には「逆境の中の希望の光」「明るい見通し」という意味があります。現在の日本にもっとも望まれている言葉です。
その想いの通り、爽やかで素直な気持ちで明日を信じて歩みたくなる行進曲です。
*行進曲の拍子には四分の二拍子、二分の二拍子、八分の六拍子・・・と様々にあります。この作品の八分の六拍子は、とかく「難しい」と言われますが、ヨーロッパには昔から行進の様子を表す時にこの拍子は多く使われていました。ほとんどが王侯貴族など身分の高い人の行進の様子です。いわゆる三拍子系が一拍に入っている感覚はなぜ生まれたのか・・・そこを考えてみるとこの拍子はとても自然なものなのだということがわかります。
*一つには人間の心臓のリズム。二拍子系のリズムではなく三拍子であることは医学的に証明されています。トク・トク・・・ではなくトトン・トトンというようにンの部分の時間がちゃんと存在しているそうですよ。一歩足を踏み出す時に三つの音が身体で響いているということを感じると、意外にしっくりすると発見できます。
*王侯貴族の行進には馬がつきものです。多くの従者、馬車がお供としてついてきます。二本足で素早く歩くより少し余裕を持った行進のイメージ、それを持つことでもこの拍子の感覚はつかめると思います。
*冒頭の3小節、導入のモチーフが各部に効果的に使われていることを、演奏の折に意識してください。構成がより明確になってきます。
*トリオの部分は【G】から前半、後半でメロディのアーティキュレーションが異なることを、丁寧に表現してください。【H】はそのバリエーションになりますが、より明確な語り口を作り上げることで、トリオ後半への流れが作られることでしょう。全曲を通してトロンボーンの役割が重要です。 |