相愛ウィンドオーケストラ第34回定期演奏会
 2012年76日(金)1830分開演 尼崎市総合文化会館大ホール(あましんアルカイックホール)
 入場料:1000円(前売り,当日共)
 演奏会は終了しました。多数のご来場まことにありがとうございました。
 当日のプログラムから、ラヴェル作曲ダフニスとクロエのライブ映像をご覧下さい。




プログラム
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第1部
和田 信 / 行進曲「希望の空」(課題曲4)
足立 正 / 吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」(課題曲3)
モートン・グールド / バラード
カレル・フーサ / プラハのための音楽1968

第2部
大前 哲 / ジョイン7 管楽器と打楽器アンサンブルのための ー 作品156
大前 哲 / ザ・プレゼンス(相愛ウィンド委嘱作品新作初演)

第3部
土井康司 / 行進曲「よろこびへ歩きだせ」(課題曲2)
福田洋介 / さくらのうた(課題曲1)
モーリス・ラヴェル / 「ダフニスとクロエ」第2組曲
演 奏     :相愛ウィンドオーケストラ
指 揮     :新田ユリ(第1部)、若林義人(第2部)
ティンパニ独奏 :中谷 満
 
ティンパニ独奏:中谷 満
ティンパニ独奏
中谷 満
 1973年3月京都市立芸術大学音楽学部管打楽器専修打楽器専攻科を卒業。京都市立芸術大学で村本一洋氏(元京都市交響楽団) 、卒業後山口恭範氏(元新日本フィルハーモニー交響楽団) に師事。1973年4月大阪フィルハーモニー交響楽団にティンパニー、打楽器奏者として入団。1977年3月より一年間旧西独国立ベルリン高等音楽院に留学。その間ベルリンフィルハーモニー交響楽団首席ティンパニー奏者 W.テェーリヘン氏、旧西独国立ベルリンドイツオペラ管弦楽団首席打楽器奏者 K.キースナー氏に師事。その間ベルリン放送管弦楽団、西独ベルリンドイツオペラ管弦楽団などに出演。1978年3月帰国。大阪フィルハーモニー交響楽団にティンパニー、打楽器奏者として復団。大阪シュベルマー金管アンサンブルの打楽器奏者として参加。現代音楽集団「グループM」を主宰、1980年より1990年まで活動する。打楽器アンサンブル「スティックス」に参加。1979年より1985年まで活動する。1990年より中谷満パーカッションアンサンブル「シュレーゲル」を主宰。
2008年より相愛大学教授。
当ホームページ内・中谷満のページへのリンク
中谷満のページ
大前 哲 Satoshi Ohmae
大前 哲

大阪学芸(現教育)大学卒業後、関西を中心とした作曲活動を行い、数多くの現代音楽演奏会の企画・制作に参画する。以後、ヨーロッパ、アメリカの各都市等、国内外で数多くの作品を発表する他、各種の音楽祭に出品。楽譜出版、CD収録等多数。作品総数約160曲。

 大阪文化祭賞、
 ブルー・メール賞、
 井植文化賞、
「グスタフ・マーラー国際作曲賞」第2位(オーストリア)、
「ウディネ国際作曲賞」第1位(イタリア)、
「国際ビエンナーレ作曲賞」第1位(アメリカ)、
「ルトスワフスキ国際作曲賞」第2位(ポーランド)、
「国際ウインド・アンサンブル作曲賞」第2位(ベルギー)、
「ICA国際作曲賞」第1位(アメリカ)、
「Egidio Carella国際作曲賞」第1位(イタリア)
   等を受賞。

若林義人:指揮
若林義人:指揮
  東京都出身。京都市立芸術大学卒業。在学中に京都市交響楽団に入団、卒業と同時に安部賞を受賞。また入団当初より龍谷大学吹奏楽部の指導に当たる。トランペットを故金石幸夫、有馬純昭、田宮堅二の各氏に師事。京都市交響楽団トランペット奏者として25年6ヶ月在籍し、2007年の3月をもって退団。2007年度より龍谷大学吹奏楽部音楽監督常任指揮者、相愛大学ウィンドオーケストラ指揮者に就任。他に生駒市立生駒中学校吹奏楽部など、数多くのバンド指導を手がける。近年は、ジャパン・ブラス・コレクション、ブラスパラダイス大阪、ブラススカラーズ大阪、ウインドアンサンブル奏等に客演指揮者として招かれ、指揮者としての活動も精力的に行っている。また龍谷大学吹奏楽部を指揮し、ウインズスコア、カフアレコードでCD録音を多数行い好評を得ている。全日本吹奏楽コンクールで龍谷大学吹奏楽部を指揮し、金賞8回銀賞7回受賞。2011年には全日本吹奏楽連盟より永年出場指揮者表彰を受賞。現在、龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部音楽監督常任指揮者、相愛大学非常勤講師、京都市立芸術大学非常勤講師、21世紀の吹奏楽"響宴"会員。


課題曲 2012 私の演奏メモ

若林義人
 
課題曲 I さくらのうた
何か大河ドラマの主題曲のように、壮大なドラマを連想させる曲ですね。美しいメロディーのこの曲は今年の課題曲の中では一番人気なのではないでしょうか。
しかし、フルート、クラリネット、ホルン、トロンボーンにソロあり、トランペットもソロ指定はないがほとんどソロのようなもの。繊細さや良い音色を要求されているのは全パート同じく。コンクールで演奏するのは非常に勇気がいりますね。また、指揮者の音楽的能力も要求されるので、これまた難しい。一番人気でありながら、意外と演奏団体は少ないのでは。
それでも挑戦するというバンドはコンクールシーズンを苦しみながらも音楽に満ちた豊かな気分で過ごせること間違いなし。一押し。

 
課題曲 U 行進曲「よろこびへ歩きだせ」
地味だが説得力のある美しいトリオを持つこの曲は比較的難度も低く、中学生でもじゅうぶん演奏可能だと思います。
この曲の最初を見ると、弱起ではなく4分の2の2拍目裏の16分音符から始まっています。これは作曲者の意図しているマエストーソを表現するのに重要な役目を果たしています。もし弱起で始まるとどうしても軽くなってしまうのです。指揮者は最初の小節の1拍目は大きく振ってしまいましょう。コンクールで時間がもったいないから1拍目は振らないなんてことをするとこの曲は台無しになってしまいます。
遅くもなく速くもなく、これが結構難しい、いろいろ試してみてちょうど良い速さを見つけて下さい。あくまでもマエストーソで。
以外と難しいのは打楽器です。特に小太鼓は大変ですね、シンバル、大太鼓はいかに良い音色で叩くかが課題になると思います。打楽器自慢のバンドにおすすめです。

 
課題曲 III 吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処、やぶら小路の藪柑子、パイポパイポ パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助

長い名前ですね(汗)、落語では寿限無が井戸に落ちて助けるのに名前が長すぎて間に合わずに死んでしまった、というブラックユーモアなお話です。
変拍子ですが、そんなに難しくありません、最初に書いた長い名前を語呂合わせして楽しんで演奏して下さい。打楽器とアルトサックスソロは重要ですね。しかし、中学生でも十分演奏可能です。コンクールでは演奏団体が多い予感。落語好きにオススメ!

 
課題曲 W 行進曲「希望の空」
オーソドックスなマーチです。しかし日本人の不得意な8分の6拍子なので、あくまでも軽やかに演奏しましょう。乗馬の文化のある西洋人になったつもりでパッカパッカと軽やかに馬の手綱を引きながら乗馬している自分を思い浮かべて演奏してみて下さい。
時折出てくる信号ラッパはユニゾンなので、張り切り過ぎるとバランスを崩してしまいます。トロンボーンは活躍しますがやはりユニゾンでの音色が軽薄に聞こえがちなので注意しましょう。
金管楽器の耐久力自慢のバンドにおすすめです。

 
課題曲 X 香り立つ刹那
まず、最初にやることは謎解きから。えーっと、これは何拍目で…という理系のアタマを使いましょう。それが嫌な人はやらない方がいいね。
でも謎解きが出来て(譜読みが出来て)合奏してみるとこんなに面白いものは無い。と思える人にオススメ!
長尾氏が言っている「楽譜から先のところ」に近づいてみたいですね。


 
新田ユリ:指揮

国立音楽大学卒業。桐朋学園大学ディプロマコース指揮科入学。
指揮を尾高忠明、小澤征爾、秋山和慶、小松一彦各氏に師事。
'90年第40回ブザンソン国際青年指揮者コンクールファイナリスト。
'91年東京国際音楽コンクール指揮部門第2位。'91年に東京交響楽団を指揮してデビュー。
その後も東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉、仙台フィルハーモニー管弦楽団、広島交響楽団、札幌交響楽団、京都市交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、大阪センチュリー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団などを指揮。また東京佼成ウィンドオーケストラ、大阪市音楽団、東京吹奏楽団など吹奏楽での活動も行っており、'94年にキングレコードより東京佼成ウィンドオーケストラを指揮して6枚リリース。 '09年10月には東京佼成ウィンドオーケストラ、大阪市音楽団を指揮したCDが3枚ポニーキャニオンよりリリースされた。
オペラでは、横浜シティオペラ、大田区民オペラ協議会で モーツァルトの5大オペラ、「夕鶴」などを指揮。 
'00年10月〜 '01年10月、文化庁芸術家在外研修員としてフィンランドに派遣され、音楽監督オスモ・ヴァンスカ氏のもとラハティ交響楽団で研修。フィンランド国立歌劇場とサヴォンリンナ音楽祭においても、オスモ・ヴァンスカ氏のアシスタントを務める。
これまでにクオピオ交響楽団、ミッケリ市管弦楽団、フィンランド海軍吹奏楽団、フィンランド国防軍吹奏楽団、ラ・テンペスタ、クリスチャンサン交響楽団などフィンランドはじめ北欧諸国へ客演を続けている。
2005年〜2007年オウルンサロ音楽祭へ招聘、2006年リエクサ・ブラスウィーク客演。
2005年9月にフィンランド日本友好協会よりラムステッド基金奨学金を授与される。
また2006年4月にはオクタヴィア・クリストンよりヨウコ・ハルヤンネ氏(フィンランド放送交響楽団ソロ首席トランペット奏者)との共演CD<Symbiosis>がリリースされた。
2006年、2007年には東京新聞フォーラム「指揮者がみたフィンランド」にて講演と演奏のプロデュース・指揮を務めた。2007年4月より2009年3月まで中日新聞「エンタ目」に月1度コラムを執筆。
プログラムノートの執筆も多く自分の公演のほか、北欧音楽を取り上げた2007年5月紀尾井シンフォニエッタ東京、2008年1月NHK交響楽団の定期演奏会を担当。
2008年6月、2010年7月にNHK「名曲探偵アマデウス」に出演。シベリウスの「フィンランディア」「交響曲第2番」を特集した番組の解説を務める。
日本シベリウス協会事務局長・理事。国立音楽大学非常勤講師、同志社女子大学音楽科嘱託講師、
アイノラ交響楽団正指揮者「森と湖の詩サロンコンサート」主宰。
公式ホームページ「森と湖の詩」http://www.yuri-muusikko.com 

新田ユリ:指揮

課題曲 2012 
演奏のための「ひ・と・こ・と」
 

新田ユリ
 
課題曲 I さくらのうた

*抒情的な作品ですね。管楽器という同族楽器で美しいサウンドを作る醍醐味を味わえる作品だと思います。力まず自然にバンド全体で八分の六拍子を作り出してゆくことが良い流れへの原動力ですね。

*旋律は現実的には伸び縮みしています。音値はリズムの上で微妙に変化をして、結果的に自然な歌に聞こえるようになります。それが作為的にならないためには 徹底して旋律を歌うことだと思います。よい旋律は自然に「うたいたい」ポイントが定まっているものです。その歌が歌いやすいようにグロッケンシュピールも微妙に揺らぎます。それが自然な流れを生みます。

*作品全体を通して「強い」表情や音がほとんど出てきません。【G】以降のpoco a poco con motoを経て初めてffに到達する作品のクライマックスまで その山を生み出す歌心の静かな情熱がバンドで共有できていれば この山を自然に登れるでしょう。

*静かな音、平板な旋律は決して「力弱く」「消極的」ではありません。心の深くから歌っていないと、何も伝わらない音楽になります。その内側の気持ちの強さがこの作品を支えることになります。

*プラルトリラーが様々な箇所についています。この処理については指揮者の判断、演奏者のセンス、両方をあわせて練り上げる必要があります。求められている旋律の表情、スピード感によって、どの速さ(リズム割)で演奏するのがふさわしいか・・が異なってくるからです。

*また併せて、木管楽器に多く出てくる十六分音符6つの塊を どのような音圧・音色・強弱の処理で演奏するのか、その統一はこの作品の抒情性の背景を作ってゆくと思います。

*打楽器の繊細な使い方にも注意が必要ですね。ウィンドチャイムを上行、下行どちらの方向を選択するのか、奏者にまかされている楽譜です。また、どの打楽器もその音色が旋律に与える効果を考えられて楽譜に記されています。そのことをよく理解して丁寧に音作りをしてください。

 
課題曲 II 行進曲「よろこびへ歩きだせ」

*気品というのは何から生まれるのでしょうね・・。今年はエリザベス女王即位60年、そしてロンドンオリンピック・・と世界の視線が英国に集まっています。英国にはエルガーという大作曲家がいて5曲の行進曲集「威風堂々」を作曲しています。第1番はもっとも有名で中間部の旋律も歌手によって歌われていますね。いずれの作品も勇壮・華麗な行進曲部と気品あふれる重厚なトリオの旋律があり、何ともいえない長い王朝時代を持つ英国の雰囲気を感じます。

*この行進曲にはそのエルガーの描いた世界と非常に近い音楽の色合いを感じます。Maestosoと冒頭に指示がありますが、ゆったりと余裕のある歩みを意図していることを読み取れます。余裕という言葉がこの作品の演奏には必要だと思います。

*冒頭のファンファーレも音域は低く始まっています。また全体を通して決して音の数は多くありません。つまりほしい響きに対して、演奏者がそれぞれしっかりと余裕をもって自分の音を響かせることが必要になります。

*【A】を演奏してみるとおのずとわかりますが、スタッカートの指示がある旋律も、決して軽い音を求められているわけではありません。低音域でのリズム処理も、切ることに意識を集中してしまうと響きがとても薄くなります。まずはしっかりと楽器を鳴らすこと、そして作品全体のテンポ感、リズム感に身体がフィットしてきたときに、きっと語り口も明確になるでしょう。

*作品の最後がもっとも華やかな響きを求められています。ここまで響きの体力を持たせること。それがこの作品の持ち味を生かすことになるでしょう

 
課題曲 III 吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」

*実に面白い作品です。言葉遊びは音楽の中に時折盛り込まれますが、本来音楽と言葉は密接に結びついているものですので、それを特徴的に際立たせた曲として思いっきり遊び心あふれる演奏をしてみてください。

*「じゅげむ・・・」の言葉とともに演奏するという練習は皆さんなさっていると思いますが、日本語は強弱のアクセントが少ない言語です。音楽的に少し強調して語り、そのニュアンスが音に出てくるようになるまで徹底してください。

*有声音・無声音・長母音・短母音など、言葉の中にもいろいろな音があります。それをどこまで音に反映してゆくか、その確認も必要ですね。

*序奏のリズムは心躍るものですが、「じゅげむ」原作ののどかな可笑しさというものにつながるような、和のリズム感をどこかで意識しているのが良いと思います。細かな音符も「つまったり」せずに、日本語が乗っかる粒立ちを心がけるとよいでしょう。

*【E】の中間部が自然な流れで歌い始めるためには、3小節前の「ブレーキ」部の作り方にカギがあるようですね。バスドラムに和太鼓のイメージを感じて、和の間合いが生まれてくると面白い転換が可能になります。中間部の歌い方も、日本語のアクセント感を意識した節回しを作るか、あるいは中間部は雰囲気を変えて和声構造にのっとった運びで、西洋風の旋律線を描くか・・・それをきちんと統一することで効果が上がるように思います。【F】からは、旋律だけにとらわれず、トロンボーンを中心としたオブリガート、あるいは和声を構築するセクションの強弱の書き方、フレーズの作り方を読み取ると、大きな音楽を描くことができます。

 
課題曲 IV 行進曲「希望の空」

*作曲者、和田信さんは実は以前教え子でした。音楽大学の吹奏楽授業で、そして個人的に指揮とスコアリーディングをレッスンしていました。現在航空自衛隊中央音楽隊で活躍しています。空の広がり、雲の美しさを描いたこの美しい行進曲のスコアを見て、その人柄を感じます。

*タイトルにある Silver Lining は航空自衛隊隊員ならではの視点ですね。雲の裏側の光は一般には見ることがなかなかできません。この言葉には「逆境の中の希望の光」「明るい見通し」という意味があります。現在の日本にもっとも望まれている言葉です。
その想いの通り、爽やかで素直な気持ちで明日を信じて歩みたくなる行進曲です。

*行進曲の拍子には四分の二拍子、二分の二拍子、八分の六拍子・・・と様々にあります。この作品の八分の六拍子は、とかく「難しい」と言われますが、ヨーロッパには昔から行進の様子を表す時にこの拍子は多く使われていました。ほとんどが王侯貴族など身分の高い人の行進の様子です。いわゆる三拍子系が一拍に入っている感覚はなぜ生まれたのか・・・そこを考えてみるとこの拍子はとても自然なものなのだということがわかります。

*一つには人間の心臓のリズム。二拍子系のリズムではなく三拍子であることは医学的に証明されています。トク・トク・・・ではなくトトン・トトンというようにンの部分の時間がちゃんと存在しているそうですよ。一歩足を踏み出す時に三つの音が身体で響いているということを感じると、意外にしっくりすると発見できます。

*王侯貴族の行進には馬がつきものです。多くの従者、馬車がお供としてついてきます。二本足で素早く歩くより少し余裕を持った行進のイメージ、それを持つことでもこの拍子の感覚はつかめると思います。

*冒頭の3小節、導入のモチーフが各部に効果的に使われていることを、演奏の折に意識してください。構成がより明確になってきます。

*トリオの部分は【G】から前半、後半でメロディのアーティキュレーションが異なることを、丁寧に表現してください。【H】はそのバリエーションになりますが、より明確な語り口を作り上げることで、トリオ後半への流れが作られることでしょう。全曲を通してトロンボーンの役割が重要です。

 
課題曲 V 香り立つ刹那

*筆者は長生淳さんの作品を回数多く手掛ける機会をこの10年頂いてきました。委嘱作品も2曲。
長生さんの作品は「演奏者への挑戦状」、自分はどの作品と向き合うときもそれを感じていました。その挑戦状には長生さんの音楽への愛にあふれ、演奏者への信頼と愛情にあふれているものです。受け取ったからには見事に受けて立ちたいものです。

*とはいえ、この作品のページを見開くと「これは・・何語?」と感じる方も多いと思います。もちろん長生語であります。過去の長生さんの作品を並べてスコア分析することも一つの方法でしょう。つまり作曲者にはそれぞれ、特徴をもった語法・文法が楽譜に現れています。その言葉づかいがどのような意味を持つのか、何を表現しているのか・・・ほかの作品の分析からヒントを得ることも大事なことです。

*連続する音型、複層的なリズム、強弱の遠近法、頻繁な強弱の変化、自由な連続から同一の音型への
緊張と弛緩・・・・長生作品の特徴を羅列するとこのようなものでしょうか。考えてみるとこれは我々を取り巻いている現象の写し絵だと思うのです。世の中は小節線もなければ、特殊事情を除いて決まったリズムですべてが同じように動いているわけでもなく。声の大きい人も小さな人もいる。成長の速度の違いもあり、カオスのように一見見えていますが、その姿を遠くから見ると実はバランスよくなりたち、様々な単位で物語が流れ、意味が生じ・・・・という音楽のドラマと同じことが起っています。
ランダムに並ぶ事象がお互いに影響を与え、受け、見え隠れしてつながってゆく・・・そんな様子がこのスコアにも見ることができます。

*具体的なアドバイスとしては、
・すべての音型に何か意味があるという確信をもって演奏すること。
・強弱のバランスが必ずしも音楽の主従関係を作っていないということ。
・音符が作り出す時間は自由であるという認識を持つこと(ゆらぎの意識)
・音色もリズムに影響することを意識。
・ほかの音型をすべて耳に入れて演奏できるまで、各自がスコアを読み込むこと

*自分のパートを細かく練習することはすでになさっていると思いますので、その細部がどのような意味を全体に与えているか、それを指揮者の方は一緒に考えて答えを導きだしてください。音が時間通り正確に並んでも、作品の言葉は聞こえてきません。それはどんな作品でも同じですね。

*作曲者が望んでいる「楽譜から先のところ」の世界。吹奏楽の世界がそこにみんなの意識が集まった時、可能性は限りなく広がると思います。音の力を信じて、様々な挑戦をこの作品では行ってみてください。

 
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